※本ブログは株式会社JX通信社のご協力により寄稿していただきました
新型コロナウイルスは私たちの日常を一変させました。なかでも、二度も発令された緊急事態宣言のインパクトは計り知れません。外出自粛、時短営業、テレワーク、マスク着用など、私たちの行動が大きく変化したキッカケだからです。
では、行動の変化は私たちの「内面」にまで影響を与えたでしょうか。緊急事態宣言前後で人を思いやる気持ちや人に対する攻撃的な心境に変化があったでしょうか。もちろん一人ひとりの心の内まで分かりませんが、「楽しい」「面白い」「悲しい」などの感情をツイートした量の変化から、内面の変化の洞察はできると考えました。
そこで、緊急事態宣言が発令された日の前後2週間(1回目:20年03月24日〜20年04月21日と2回目:20年12月24日〜21年01月21日)で「コロナ」という単語が含まれるツイートをサンプリング抽出し、感情分析ライブラリ「ML-Ask」を用いて、抽出した総ツイートを自動的に分類してみました。
感情分析ライブラリ「ML-Ask」を用いた分類
感情分析ライブラリ「ML-Ask」を用いれば、ツイートを喜/怒/哀/怖/恥/好/嫌/昂/安/驚に分類できます。データを与えると、以下のような結果になりました。
1回目は哀(sorrow/sadness/gloom)と怖(fear)の比率が下がり、その分だけ安(relief)と喜(joy/delight)の比率が上がったように見えます。2回目は逆で、怖と嫌(dislike/detestation)の比率が上がり、安と喜の比率が下がったように見えます。
これらはあくまで定量的な傾向ですので、なぜそうなっているのかを知るために一件ごとのツイートを目視でチェックしてみました。
1回目の緊急事態宣言発令時は、「嫌だけど仕方がない(これで良くなる、事態は改善する)」とする声が相対的に増えていました。もちろん、将来に対する悲観的な声も多くありました。しかし、人生初の緊急事態宣言を迎えて、何が起こるか分からないし先が全く見えない困惑から悲観しているツイートが比較的に多いように見えました。
一方で2回目の緊急事態宣言発令時は、「収束するのか不安(本当に良くなるのか、事態が改善しない)」とする声が相対的に増えていました。今日、明日の仕事はどうなるのか、馴染みの飲食店が閉店することが嫌だといった、具体的な言及が多かったのも特徴といえます。
ワードクラウドを見比べて気付く変化
もう少し詳しく見ていきましょう。
緊急事態宣言1回目で「安」に分類されたツイートの内容をパッと把握するために、ワードクラウドを用いました。文章中で出現頻度が高い単語を選び、頻度に応じた大きさで表示する技法で、まさにパッと分かります。以下の通りです。
発令前
発令後
前後で見比べると「笑顔」「自粛」「絶対」が一気に大きくなっていると分かります。その他にも「心配」「生活」「楽しみ」「余裕」などの単語も増えているようです。つまり、緊急事態宣言の発令後に「登場回数が増えた単語」があるようだ、と分かりました。
同じように、緊急事態宣言2回目で「嫌」に分類されたツイートの内容をパッと把握するために、ワードクラウドを用いました。以下の通りです。
発令前
発令後
前後で見比べると「緊急事態宣言」「ニュース」「病院」が一気に大きくなっていると分かります。その他にも「飲食店」「成人式」「後遺症」などの単語も増えているようです。「成人式」などは時期的な要素もあるでしょうが、それ以外は緊急事態宣言という外的要因が、さまざまな人の想いや考えに影響したと仮説を立てました。
そこで、感情分類されたツイートを形態素解析(文章として構成されている単語を最小単位に分解する分析)し、緊急事態宣言前後で出現頻度を比較しました。そして、登場回数が格段に増えた「単語」が登場する1件1件のツイートを、目視でチェックしてみました。
1回目は「激励と感謝」、2回目は「閉塞感と苛立ち」
1回目の緊急事態宣言後に増えた「笑顔」「自粛」「絶対」などが含まれるツイートを読んでいると、特徴的な傾向として「激励と感謝」で括られるなと考えました。
激励の気持ちの現れの1つとして「#コロナばっかりで気が滅入るから○○」「#コロナが落ち着いたら○○」というハッシュタグが流行し、みんなのTLを好きで溢れさせようとするツイートも増えたようです。一方で、2回目の緊急事態宣言後に増えた「緊急事態宣言」「ニュース」「病院」などが含まれるツイートを読んでいると、特徴的な傾向として「閉塞感と苛立ち」で括られるなと考えました。
「ストレス」という単語をとっても、1回目と2回目で傾向は大きく異なります。1回目は在宅で外を出歩けないストレスを解消するために「爆食い」「爆買い」「Twitter見る」「『あつまれ どうぶつの森』の沼にハマる」といった独自の解決法をツイートする傾向にありました。一方で2回目は解消法自体に対する言及が減り、ただ現状に対するイライラからくるストレスをツイートする傾向にありました。
もっとも、2回目の緊急事態宣言ともあって、「対策」が含まれるツイートは1回目と比較して対策の緻密さ、いわゆる解像度が格段に上がっています。
つまり、全員が常時イライラしているというわけでもなく、1回目の知見を踏まえて「やるべきことはやろう」「知見を共有し合おう」とTwitter上で見聞きしたものを参考に行動しようとする人たちも一定層いるということです。
まとめ
冒頭に「緊急事態宣言前後で人を思いやる気持ちや、人に対する攻撃的な心境に変化があったでしょうか?」と述べましたが、今までの傾向から「心境の変化はあった」「ポジティブな時もあれば、ネガティブな時もあった」といえそうです。
人間ですから、常に楽しい時ばかりでも無いですし、逆に言えばずっと悲しい時ばかりでも無いとも言えます。感情の起伏がフィルターを通らず、「人間らしさ」としてツイートから溢れていたということが分かりました。。
「コロナ」を文中に含むツイートを抽出して、全てが「嫌」ではなく「安」「喜」が一定層含まれるのは、過酷な環境にあっても適応し、それでも前進し、自分や身の回りを通じて社会を良くしていこうと頑張ろうとする人間の「しなやかさ」を垣間見た気分でもあります。
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